メンバーインタビュー 01 宇都 星奈

メンバーインタビュー

らしさに気づく一歩目を、探究で届けたい

01 宇都 星奈(コンテンツ開発 /PM)

「意外と特別なことじゃなくて、自分の経験を振り返ってみることを通して、誰もが探究ってできるんだよ」ということを伝えていきたい

そう話してくれたのは、Foraでコンテンツ制作を担当する宇都星奈さんです。探究学習をさまざまな角度からサポートするFora。「Foraで働くスタッフがどんな想いを持ちながら、Foraや探究学習に関わっているのか」を聞き、Foraをより深く知るきっかけをお届けするインタビュー。今回は、宇都さんが探究学習やForaに関わるきっかけ、現在の活動やそこに込めた想いについてお話を聞きました。

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コンテンツ開発 / 広報
宇都 星奈(うと・せいな)

1997年、鹿児島県生まれ。2017年に東京大学に入学後、NPOカタリバでライフキャリア教育に出会ったことをきっかけに、休学して島根県益田市の一般社団法人豊かな暮らしラボラトリーで活動。地域の子どもと大人をつなげる場づくりや高校生の地域探究活動の支援を行う。2020年10月より一般社団法人Foraに参画し、教材作成やワークショップ開発など、コンテンツ制作に携わっている。

“生徒に届ける、一歩手前

はじめに、宇都さんのお仕事をざっくりまとめると、どんなことをしてらっしゃるのでしょうか。

教材をはじめとして、生徒へ届けるコンテンツをつくる人だと思っています。これまでに、生徒の探究テーマ設定に伴走する探究学習教材や、学問の魅力を伝えるキャリア教育教材、探究基礎力を身につけるためのワークショップなど、生徒の学びを深めるためのコンテンツをつくってきました。

特に、コンテンツをつくる過程の中でも、コンテンツを生徒に分かりやすく、伝わりやすいよう編集する部分に力を入れて取り組んできました。

ー 編集というと?

例えば、ワークシートをつくる際であれば、“どういう言葉を使ったら生徒に説明が伝わりやすくなるか”や“生徒が問いに対する答えを書きやすくなるか”といった視点で文章やイラストなどのデザインを組み合わせていくんです。

もちろん、コンテンツの企画段階にも関わっています。

一方で、コンテンツの制作段階で“メンバーそれぞれが強みを生かすとしたら”と考えてみると、私は編集段階で力を発揮しやすいと気づいたんです。他のメンバーが0から考えた企画をより良くする部分が、私は得意だなと。

Fora全体としてより良いコンテンツを届けるために、生徒に届ける一歩手前をより良くすることが、私にはできるし、合っていると思っています。

本にしたくて

なるほど。そもそも探究学習をサポートする方法には、色々なものがあると思うのですが、宇都さんが教材をはじめとするコンテンツでサポートしたいと感じたきっかけは、何かあったのですか?

元々、探究に関する教材をつくりたいという目標があったんです。なぜかというと、以前活動していた団体で探究学習に関わる中で、教材の可能性みたいなものを感じたことがあって。

ー 教材の可能性?

そうなんです。以前の団体では、一つの学校に伴走して一緒に授業やカリキュラムをつくったり、実際に生徒にメンターとして伴走したりしていました。そうした活動を通じて、探究学習を通して生徒に色々な力が身につく確信を得て、探究学習の考え方への共感がより深まったんです。

ただ同時に、現場で実践する上で、理想と現実のギャップを埋める方法を先生方が試行錯誤している様子も多く目にしました。

特に感じたのが、方法が手探りであることへの不安でした。現場の先生方は、とても熱心に想いを持って取り組んでいらっしゃいますが、他の業務でお忙しかったり、探究を指導するノウハウが少ないことに不安を感じていたりして。そういう先生方を見て、探究学習における一つの道筋として、教材というものが先生方をサポートできるかな、と思うようになったんです。

なるほど。たしかに、先生方にとっての道筋でぱっと思い浮かぶのは、教科書や指導書ですが、探究学習における教科書のようなものはあるのでしょうか。

私が知っている範囲の話になりますが、探究学習のコンテンツ集や事例集は、既にたくさんあるように感じています。

ただ、生徒が実際に取り組むような教材やワークシートは、あるにはあるけれど、まだ種類が少なく、先生たちが自作していることも多いのが現状です。特に、探究学習のプロセスの中でも、問いをつくる部分をサポートする教材が少ないと感じています。

今年度から「総合的な探究の時間」が本格実施され、「こういう探究学習をやりたい」という理想にチャレンジする学校が全国にたくさんあります。そうした想いのある理想を実現するために、理想に近づくきっかけを提供する存在として、教材やワークシートがあったらいいんじゃないかと、私は思うんです。

そう言われると、探究学習の考え方や支援の仕方といったソフト面のコンテンツ集、事例集はよく見ますが、直接生徒に届く教材やワークシートはあまり聞かない気がします。

そうですよね。

以前所属していた団体で、実際にワークシートを他のメンバーと試行錯誤してつくって生徒に届けた経験がとても印象に残っていて、それが今、こうして教材を作ることへのこだわりに繋がっているのかもしれません。

当時つくったワークシートは、実際に生徒が書くところまで様子を追いかけたんです。そしたら、ありがたいことにそれが先生方にすごく好評で、生徒も「振り返るきっかけになった」「書くのが楽しかった」と言ってくれて。自分の中ですごく嬉しくて、今も心に残っているエピソードです。

ええ。それは嬉しいエピソードですね。その経験があったから、今Foraに関わるようになったのですね。

そうですね。Foraに関わりたいと思った理由は、探究学習の教材やコンテンツをつくる部分に関わるチャンスがあるからでした。

そして、Foraが教材をどのように捉えているかという価値観が自分に合うと感じたのも理由の一つです。ただ教材を提供するだけでなく、教材を使って、どうそれぞれの学校らしさを出していくか教材を一つのきっかけとして、学校や先生方が目指しているものに近づいていくか。これが、Foraの教材に対する価値観です。

Foraが教材だけでなく、学校伴走支援を併せて提供したいと考えている理由は、ここに紐づくと思っています。

教材を一歩目に、学校、先生、Foraが一つになって目指すものに近づいていく。しかも、その道筋を考えることも、一緒に。そういったForaの姿勢やあり方は、私が探究学習や教材づくりに関わる上で大事にしたいことと共通点が多かったんですよね。

だから、やっていること、あり方も含めて、Foraで活動したいと思ったんです。

生きる軸を見つける一歩目。それが、探究学習だった

宇都さんの過去についてお聞きしたいのですが、宇都さんはどんなきっかけで探究学習と出会ったんですか?

実は大学時代、どうやって自分のやりたいことや軸を見つけたらいいのか、全然分からない時期があったんです。

その時期に、たまたま所属しているゼミの先輩に紹介いただいて参加し始めた団体が、中高生を対象に、対話を通したライフキャリア教育や探究学習などの事業をしていて。事業の中でも、特に探究学習は、最初「正直よく分からないな」と思っていました。分からないというか、たぶん自分が高校生の時に探究学習があったら、絶対できないだろうなと思ったんですよね。

なぜかというと、高校生の頃の私は、特別好きなものもなかったし、何か探究したいテーマもなかったし、問いもなかったし。それでも探究学習に関わっていき、たくさんの高校生の姿を見ていくうちに、自分の興味関心とか問題意識とかを形にしていくことは、特別なことじゃないのかも、と思うようになったんです。

探究学習で関わる高校生に宇都さん自身を重ね合わせて考えるようになったんですね。

そうなんです。もちろん、興味関心や問題意識を形にして探究していくことって、すごい。すごいんですが、いい意味でみんなきっと普通の子たちなんですよね。探究する才能がある、ということではなくて、何か一つきっかけがあり、その子自身の中にあった探究の種を見つけたその種をちょっとずつちょっとずつ育てていったから、興味関心・問題意識とやりたいことが一本の道のように繋がっているんだと気づいたんです。

そして、自分は絶対に探究学習はできないと思っている私も、自分自身でハードル上げてるだけなんだと思うようになってきたんです。もしかしたら、自分で無理だって思い込んでいるだけなのかもしれないなと。

そうやって思い込みを外して自分の内面に目を向けてみると、自分の中にも問題意識や興味関心の種はたくさんあるということに気づいて。そうしたら、自然と私と同じように自分でハードルを上げてしまっている高校生もいるかもしれないと考えるようになりました。

ー 宇都さんと同じような高校生?

そうです。今、探究学習をしている子の中には、やりたいことや好きなことがない、探究なんかめんどくさいと思っている子もいるかもしれません。

その子たちに少しでもいいから、探究って誰もができるんだよ、ということを伝えていきたい。問いを持つことは特別なことじゃないんだよ、じっくり少しずつ自分の経験や内面を深めてみると、意外と探究ってできるものなんだよ、と

そして、この探究する姿勢は、生涯学習に近い考え方だと、私は感じています。子どもだけではなく、大人も含めて、どんな人たちも人生を通して探究し続けていく。興味関心や問題意識に沿って、自分なりの問いを持って生きることこそ、自分の軸を持って生きることだと、私は感じています。

だから、探究学習がきっかけのひとつとなり、様々な人たちがそれぞれの問いや解決したい課題に向かっていく。そんな「探究し続ける」人たちのサポートに取り組めたらいいなと思っています。

生徒にとって一番いいものを、届けたい

宇都さんの中で、Foraに関わるようになって印象に残ってることを教えてください。

今年の4月にリリースした探究学習ワークブックをつくったことです。

実は、企画から1年半かけて完成した教材で、昨年の5月には企画の骨子やコンテンツ、ワークシートの内容は完成していました。その段階でリリースすることもできなくはなかったのですがどうしてもそうしたいとは思えず。

「このままでいいのかな」「もっとよくできないかな」という気持ちが拭いきれませんでした。

もちろん、昨年の5月に出来上がったワークブックにも、すでに私たちもこだわりが詰まっていました。コンテンツやワークシートは、自分たちが今まで見てきた生徒や自分自身を振り返り、どういう過程を経て、自分の経験を問いに落とし込むかを考えて設計したものだったので。

ただ、私たちの経験から考え出した最適なコンテンツやワークシートが、他のどんな人も使いこなせるかというと、そういうわけでもない。だからこそ、もっと色々な背景や感性を持つ人にやってもらわないといいものはできないよね、とメンバーで話し、そこから1年間かけて改訂を重ねたんです。

すごいこだわりですね。具体的には、どのような改訂を行ったんですか。

例えば、高校で探究学習のサポートをしている大学生に協力をしてもらい、実際にForaがつくった探究学習ワークブックを使い、効果的に問いが立てられるかのテストプレイを何回も行いました。

テストプレイを行い、メンバーで分析をして、改訂案を作成し、再度テストプレイを行う。これを何回か繰り返し、使いやすい探究学習ワークブックを作り上げていきました。

ただ、何度も改訂を重ねる中で、教材としてできることの限界も見えてきたんです。やはり、リアルな場で直接先生方や大学生が関わって生徒に伴走することはとても重要ですし、身近に問いを投げかけられる人がいるかどうかで、生徒が得られる価値も大きく差が出るなと。

それでもなるべく、教材ができることの幅を少しでも増やしたくて。せっかく世の中に出すなら、いいものをつくりたいじゃないですか。

そのために、どうしたらいいかということを試行錯誤し、何回も内容を改訂した上で、今年4月に無事、探究学習ワークブックをリリースすることができました。

ー 実際に私も探究学習ワークブックを拝見しました。中でも印象に残っているのが、ワークシートの記入例で、しかも手書きのデザインになっていますよね。

まさに、そこはこだわったポイントです。

ワークシートって、文言一つ、線一本の違いで、生徒がどれだけ書けるかが変わると思っていて。

私、ワークシートをつくったらよく印刷して、自分で書き込んでみるんです。そうすると、思ったよりもこの枠小さいな、ここ線があった方がいいな、といったように色々気づく部分があったりして。

完璧はどこまでいってもないと思います。それでも、なるべく生徒の手元に届く前の段階から、届ける生徒をイメージして、その生徒にとって一番いいものを届けたいんです。

今のお話を伺いながら、Foraのみなさんは自分たちがつくったものに、自分たちが問いをもつ姿勢がすごいなと思いました。まさに探究心ですね。

そう言われると、探究を探究している感じですね。

探究は、正しいやり方とか、こうすればうまくいくという攻略法をまだ誰も発見してない領域だと思っていて、どこの学校も大なり小なり課題を抱えて困っているように、私は感じています。だから、これで絶対上手くいきますと伝えることより、探究し続けて少しでもよりよいものに近づけていく姿勢の方が大事だと思っています。

加えて、代表の藤村ともよく話すのですが、やっぱり私たちがつくるものは、最後は生徒が主語じゃないといけない。生徒がどう取り組むか、どう取り組んでほしいのか、そういうことを中心に考えることがForaらしさなんじゃないかと。

私たちが伝えたいものや生徒に学んで欲しいものは、もちろんある。でも、それを生徒がどう受け取るだろうか、という想像力をForaがなくしたら、ただの一方的で面白くない教材になってしまうと思っているんです。

自分たちが伝えたいものを生徒がどう受け取るか。届いた一歩先を想像することこそ、私たちが忘れてはいけない想像力ですね。

問いをもつ、人生を豊かにする一歩目を

では最後に、これから宇都さんがForaでやってみたいことを教えてください。

ひとつは、教材をアップデートし続けていくことです。

今年は実証期間として、3校4学年に探究学習ワークブックを導入していただいています。生徒の手に探究学習ワークブックが届いて、どんなふうに探究が進んでいくかを見る期間でもあるので、そこで得た情報を踏まえて、生徒や先生方も含めてみんなで教材をアップデートしていけたらいいなと思っています。

もうひとつは、現在ちょうど製作中の総合型選抜対策の教材です。探究学習を進路につなげていく一つの手段として、総合型選抜は大きいと思います。

ただ、総合型選抜に関しても、確立されたノウハウが少なかったりやり方が分からなかったり、探究学習と同じように、生徒や先生方をサポートする方法が多いとは言えないのが現状です。たとえ、総合型選抜という選抜方法は知っていて、チャレンジしたい生徒がいたとしても、どう対策したらいいかわからずに手を伸ばしきらない子もいると聞いています。

だから、そういうもったいないチャンスを生かすきっかけを教材でつくることができたらいいなと。その意味で、探究学習ワークブックのもう一歩先の教材として、探究学習と総合型選抜の橋渡しをするコンテンツをつくっていきたいです。

とても大事ですし、必要としてる人がたくさんいるように感じます。Foraに限らず、宇都さんが人生を通して実現していきたいことはどんなものでしょうか。

子どもから大人まで、自分の問題意識や興味関心に沿った「問い」を持って生きていける社会になったらいいなと思っています。

誰しもどこかで、こんなこと考えても無駄かなとか、自分がやらなくてもいいかなとか、やりたいことに蓋をしちゃう部分がある気がしていて。

でも、自分のありたい姿やこんなふうに生きていきたいなという理想は、自分なりの問いが起点になって生まれるものなんじゃないかなと、私は感じています。

その問いを突き詰めた先に、その人らしさや実現したいことが見えてくる。

その問いが何か大きな成果につながるとかではなくても、何か一つのことを探究し続ける姿勢そのものがとても素敵ですよね。

そんなふうに、問いを持って、あり方や生き方を探究していく人たちの一歩目をサポートできる存在になれたら嬉しいです。

聞き手・ライター:加藤恵美 / 写真:鈴木あゆみ

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