メンバーインタビュー02 竹田 琢

メンバーインタビュー

Foraだからできる学校伴走を提供したい

02 竹田 琢(学校伴走 / コンテンツ開発)

「学習者の視点に立った探究の授業をつくるために、先生とフラットに対話できる存在でありたい」

そう話してくれたのは、Foraで学校伴走を担当する竹田琢さんです。探究学習をさまざまな角度からサポートするFora。「Foraで働くスタッフがどんな想いを持ちながら、Foraや探究学習に関わっているのか」を聞き、Foraをより深く知るきっかけをお届けするインタビュー。今回は、竹田さんが探究学習やForaに関わるきっかけ、現在の活動やそこに込めた想いについてお話を聞きました。

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学校伴走 /コンテンツ開発
竹田 琢(たけだ・たく)

1995年、山形県寒河江市生まれ。2018年青山学院大学国際政治経済学部卒業。2022年同大学院社会情報学研究科博士前期課程修了。専門は認知科学、教育工学。研究テーマは人が学習内容を振り返る方法。Foraではワークショップや教材の開発、探究学習の伴走支援を担当する。湘北短期大学、東京工科大学非常勤講師。

同じ熱量で話せる相手になりたい

まずはじめに、竹田さんがForaで取り組んでいることを教えてもらえますか?

Foraでは、学校伴走を担当しています。
一言で言うと、探究学習や授業設計に関して先生の相談にのることですね。先生は、学習目標の整理をしたり「来週の授業は何をしようか?」というミクロな視点で考えるプロフェッショナルだと思っています。

だからこそ相談していただく外部団体としては、客観的かつマクロな視点で、
「探究学習を行う目的は?」
「生徒にどうなってほしいのか?」
という根本的な目標に立ち返る問いかけをすることが大事だと感じていて。コンセプトとカリキュラムや授業、といったように、抽象と具体を行き来するお手伝いをやっているのかなと思っています。


ー抽象と具体を行き来するお手伝い、ですか?

はい、例えば探究の授業は学校の先生方も手探りなので、
「授業は8コマ、最後に発表がしたい」
「授業の日にちは決まっているけれど、コンセプトはまだ決まっていない」という状態でご相談いただくこともあります。

そのときに、
「この活動を通して生徒さんはどうなると良いのでしょうか?」
「年間の学習目標は何で、逆算すると2学期中に達成したいのはどの辺りまでですか?」
というように、学習目標の整理を一緒にしていて。

「1学期中に発表ポスターにまとめて発表することをゴールに置くとすると、そのためには来週の6回目(8回中)でここまで進める必要がありますね。1,2コマ目はこれをやりましょう」みたいにコンセプトの整理をした上で「何をやるか」ということまで、一緒に考えるようにしています。

また、先生との打ち合わせの際には「生徒たちは問いを書くことはできるけれど、具体性が乏しい。どうしたらもっと具体的な問いを書けるようになりますか?」と相談されることもあって。

そういった時は、その場でスライドを作って「こういうふうな案が3つあって」とこれまでの他校の事例や探究学習支援の経験、学習に関する先行研究を踏まえて即興で説明することもあります。


ーなるほど。クライアントと外部とは思えないほど、対等な関係でお仕事をしているように見えます。

本当に、仲間というか、同じ熱量で話せる対等な存在ですね。

探究担当の先生って、学校の中に一人や二人しかいない場合もあるので、やっぱり探究学習の設計や推進で孤独感を感じてしまうことも多いのかなと思っていて。

生徒の成長のためにどうすればいいか、勉強したり熱心に考えたりされている先生方が多いので、いわゆるコンサルタントのように答えを提供する相手というよりも、壁打ち相手というか、一緒に議論する話し相手になれたらいいなと思っています。

二人三脚で進めること

竹田さんがForaで学校伴走をし始めたのは、そもそも何がきっかけだったのですか。

もともとForaを知ったのは、学部生の時に元共同代表の亀岡恭昂さんが教育系イベントで講演されているのを聞いたことでした。
「教育を人生に統合する」という当時のForaの理念に共感して、一緒に働きたいとすぐに連絡をしたのを覚えています。

「学校伴走」に関わり始めたのは昨年からで、現在の代表の藤村さんに誘われたからです。もともと教育関係の仕事に関わる動機の一つに、少しでも生徒が体験するコンテンツの質を高めたいという思いがあったため、力を入れて取り組んでいます。

なるほど。自分自身でコンテンツを実施するのではなく、あえて「伴走」という関わり方をしているのはなぜなのでしょうか?

自分でプログラムを実施するよりも、学校の先生が実施するプログラムの支援をするほうがより体験の質を高められると思っているからです。
学校ごとに教育理念や学習目標、実施したい探究のイメージは異なっているので、最初は既存の教材に沿って進めていったとしても、だんだん理想と現場にずれが生じやすいのが実情です。

そうなると、我々外部団体ができることは、学校ごとの課題に合わせてフリースタイルで先生たちに役立つ情報やアイデア提示しながら対話していくことだと思っていて。
先生がForaのことを信頼したり期待してくれているからこそできる支援の方法だと思うので、困っていることや相談したいことがあれば全力で応えたいですね。

だからこそ、学校伴走は、あくまで学校が主役だと思っています。

こういう話をすると「なんで先生にならないの?」と言われることもあるのですが、僕自身は生徒と毎日向き合い続けるのはあまり得意ではないと感じています。

外部団体の僕は授業の質を考えることにだけ集中することができるけれど、学校現場の先生方は毎日生徒たちと少しずつ関係構築しながら日々現場に立ち続けています。だから学校の先生はすごいなとリスペクトしています。その上で、僕は自分の得意な関わり方で先生の課題の解決や、生徒の学習体験の質の向上に貢献できるようにしたいですね。

ー 先生方と二人三脚で進めているのですね。

そうなんです。自分なりの教育観や探究観がある先生方も多いので、そういう方とお話できること自体僕も楽しいなと感じています。

例えば、ご自身で作り込まれたワークシートを使っている先生がいらっしゃって、本当にすごいなと思ったので「学習者の視点に立って丁寧に作られているので生徒さんも記入しやすいですね」「これが販売されていればぜひ使いたいと思う他校さんも多いですよ」などと声をかけたんです。そうしたら「竹田さん、作っているうちに気がついたら朝でした!笑」と、とても嬉しそうに話してくれたりするんですよね。少しお体が心配ではあるんですが(笑)
「このワークシートはすごい」といったような、試行錯誤しながら探究学習に取り組んでいる者同士だからこそ分かる感覚はあるんじゃないかと思いますね。

知名度の高いわけではないForaを見つけて連絡をくださる先生って、生徒の学びをより良くしたいという熱心な思いがある方が多いです。
そういった先生方の中には、同じ水準で議論できる相手がなかなかまわりにいない方もいると思います。だからこそ、僕らみたいな話し相手がいて、一緒によりよい探究の授業をつくっていくことで、少しでも先生方の負担を減らしたり励ましたりできたらいいなと思いますね。

正解がない問いを考える

先生とのやりとりをお聞きする中で、即興的に、その場で案を出しながら対話をしている印象があったのですが、そこに対して何かこだわりはありますか?

Foraに関わるきっかけを作ってくれた人でもある元共同代表の亀岡さんの影響かもしれないですね。

実はForaに関わり始める前から中高生向けのワークショップの設計やファシリテーションの実践経験を重ねてはいたのですが、自分一人やチーム内で時間をかけて設計する経験はあまりありませんでした。

企業のクライアントや先生との打ち合わせで、亀岡さんがその場でiPadに構造を書き込んで整理している姿をみて、かっこいい!と思って真似から始めました。

そうだったんですね。ワークショップを学び始めたきっかけはなんですか?

ワークショップには、ある団体のボランティアに参加をしたときに出会いました。

僕は山形出身なのですが、中学・高校と環境に恵まれまあまあ楽しく過ごせていました。

高校ではカヌー部でインターハイに出たり、勉強も頑張っていて充実感はあったんです。

けれどやっぱり地方あるあるだと思うのですが、どこか閉塞感というか、今いる環境や価値観の狭さを感じていました。

それで大学は東京に行きたいと思って。環境さえ変えれば閉塞感を打破できると期待して、実際に東京の大学に入ったのですが、それでも退屈さはあまり変わりませんでした。
大学で学んでいた国際政治学にそれほど関心も持てず、これからどうしようかな、と思っていたときに出会ったのが、体験学習やワークショップを行っているNPOだったんです。

今まで中学や高校でやってきた学習は、すべて「教科学習」と呼ばれるもので、正解が決まっているタイプの学びでした。一方で、「体験学習・ワークショップ」と呼ばれる活動においては、正解がなく、気づきそのものが学びになります。
正解がない問いを自分で内省しながら考えて、試行錯誤しながらやり続けることが、社会で生きる上で必要な学びだということにも気がついて。

高校までの学びが自分にとってそんなに楽しくなかった分、そういう学び方があるんだな、と衝撃を受けました。そしてそのまま、のめりこんでいきましたね(笑)

同時に、設計が甘くてもったいないと思うワークショップもたくさん見るようになりました。「子どもたちのためにと言いつつも、本当にそれは子どもたちのためになっているのか?」など、学習者の視点を持てるファシリテーターになりたいと思い、ワークショップをやっている会社やNPOに自分からアプローチして関わるようになりました。

ー 答えのない学び、まさに探究学習ですね。

そうなんです。
自分がワークショップをやったり、受けたりするうちに、ワークショップのような学習体験活動って楽しいコンテンツにもなりうるし、つまらないコンテンツにもなりうると気付きました。

よりよい教育のためには授業やワークショップのようなミクロな改善ではなく、政策や巨大な資本による制度の変革が必要だと思っています。ただ、やはり時間もかかります。長期的な変革が起こる中で、学校では今日も授業を実施している先生、学んでいる生徒たちがいます。僕は現在の学習の場にいる人達の支援の方に関心があるというか、気がかりです。

また、総合的な探究の時間は、公教育として生徒全員が受けなければいけないプログラムだからこそ、先生たちと一緒に、そこに妥協なく一緒に向き合って、手を動かしていきたいですね。

完璧なコンテンツにはできなくても、今も学びの場が生まれ続けている以上、今できる範囲でよりよくしていくことが大事だという信念を持っています。

先生に寄り添った支援を

これから先、竹田さんがForaでやりたいことを教えてください。

先生方に、教材だけではなくて「伴走」を導入していると思っていただけるようになりたいですね。Foraは小さい規模の団体だからこそ、小回りの効く、先生に寄り添った支援ができると思っています。

代表の藤村さんが経営や営業周りのことを担ってくれている分、僕の立場では相談いただいた学校の実践や、授業を受ける生徒の学習に寄与するような支援のことに注力できています。先生方には、Foraの学校伴走が一番手厚い、寄り添ってくれると感じてもらえるようになりたいです。

実は、探究学習の教材を販売している会社は複数あるのですが、教材と学校伴走を両方併せて提供している会社やサービスって、探究学習だとあまり見かけないんですよね。先ほども申し上げたように、学校ごとに教育理念や課題は異なるので、教材が学校の文脈にマッチするように導入していく必要があります。Foraは教材も提供してますが、どのタイミングでどう使えばより効果的か、評価方法、生徒への具体的なサポート方法といったところも一緒に考えます。

また、1年間を見据えた時に、教材は導入していないけど学校伴走だけ依頼されている学校もあります。学校が目指していることや、これからやりたいことに向けて、一緒にどう進めていくか、より良くしていけるかをこれからも考えていきたいですね。

最後に、Foraに限らず、竹田さんが人生を通してやりたいことはどんなことなのでしょうか。

学習の現場に関わり続けながら、実践と省察を往復している人になりたいですね。

現場と理論の片方だけに詳しいよりも、両方を行き来しながら葛藤し、試行錯誤している人の方が誠実な場や関係をデザインできるだろうと思っています。
現在も大学の非常勤講師としてワークショップや学習環境の作り方を教える仕事をしながら大学院で学習に関する研究活動を行っています。

また、ワークショップにおいて、基本的にはファシリテーターと受け手はフラットな関係だと思っています。正解がない場で対話していくスタンスが共通認識であると思うので、教えたいというよりも一緒に学びたいという気持ちが強いです。

大学でも、学生を無知な存在として扱わずにフラットに議論や対話したりしてくれる先生の方がたくさんのことを吸収させてもらえたなと思っています。僕自身も、僕の正解を押し付けるのではなく、共通の目的に向かって、対等に話し合えるような場や関係を作り続けられる人になりたいと思います。

聞き手・編集:加藤恵美 / ライター・写真:鈴木あゆみ

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