今さら聞けない!探究学習ってなに?考え方、目的、メリット

2022年から、高校では本格的に探究学習がスタートします。総合的な学習の時間が、総合的な探究に代わると同時に、地理探究や古典探究のような科目も登場します。それでは、そもそも「探究」とはなんなのでしょうか?? なんとなくは理解しているけど、ちゃんと理解はしきれていない、、と思われたみなさまに、探究学習について説明をします。

探究学習とは

 探究学習は、自ら問いを立てて、それに対して答えていく学習です。

教科における、教師が立てた問いを生徒たちが正解を探すのではなく、自分自身で問いを立てて、その答えを出したいという「探究心を大切にして、学習を進めていく方法です。そのため、「生徒の主体性をいかに引き出せるかが重要なキーワードになってきます。

ここから先は、探究学習の中心である「総合的な探究の時間」について説明をしていきます。

なお、探究学習は2022年からの学習指導要領の改訂から導入予定で、注目を集めています。2022年からは、「総合的な学習の時間」が、「総合的な探究の時間」に名称変更されます。他にもこれまでの主要教科でも「古典探究」「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」「理数探究基礎」「理数探究」と導入される予定です。

「生徒が探究する」とは?

生徒が探究するとは
 自分なりに問いを立て、情報を集めて分析して、まとめ発表する一連の流れを行うことです。

①自分なりに問いを立てる
生徒が探究していると言えるためには、自分で問いを立てることが不可欠です。
逆に言えば、先生や人から与えられた問いは、探究学習の問いとは言えません。
自分なりに課題を見つけて、課題設定をして初めて探究学習の一歩となります。

②情報を集めて分析する
生徒が自分の問いに答えようとするためには、情報を集めて分析すること、が必要です。
ただ単に問いを立てるのが探究学習ではありません。自分の立てた問いに対して、答えようとする活動が探究学習です。探究学習では、立てた問いに答えるための、情報を集めて分析します。

③まとめて発表する
生徒が探究の最後に行うべきなのは、まとめて発表すること、です。
もしアウトプットがなければ、せっかくのインプットも消化不良で終わる可能性があります。生徒の学びが実りあるものにしたり、学びに区切りをつけるためにも、まとめて発表する機会が大切です。

以上の流れを文部科学省の学習指導要領解説では以下のように定義しています。その上で、下の図のように「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」が、螺旋階段上に続いていくようなイメージを探究のイメージとしています。詳しく後ほど解説します。

① 【課題の設定】体験活動などを通して,課題を設定し課題意識をもつ
② 【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする
③ 【整理・分析】収集した情報を,整理したり分析したりして思考する
④ 【まとめ・表現】気付きや発見,自分の考えなどをまとめ,判断し,表現する

高等学校学習指導要領平成30年告示解説総合的な探究の時間編 123p

なぜ、いま探究学習なのか

 未知の課題に対応するには、指示待ちではなく、自分で考える人が大切だから

例えば、今回の新型コロナウィルスでも、様々な現場で初めての課題に向き合うことになりました。その中で大切なのは、答えがないなりに、自分で考え、自分で解決を目指す人が大切です。まさに新型コロナウィルスのなかで、誰も答えがない中でも、一人一人で考えて判断することが求められました。

これからの時代は、終身雇用が崩壊したり、AIが台頭したり、デジタル化やグローバル化が進展したりと、様々な変化を迎えます。変化することで、これまで「正解」とされていたものが変わる可能性さえあります。その中で、自分なりに考えて、自分なりに問題を見出して、自分なりの答えを見出すことが大切だと考えられています。

以下の引用では、日本の産業界の声として、経団連が2018年に発表したレポートを掲載します。文系理系問わず、学生に求める能力として、「主体性」や「実行力」、「課題設定・解決能力」が上位に挙げられています。

産業界が大学等卒業時に学生が身に付けていることを特に期待する素質、能力、知識について聞いたところ1、文系、理系での大きな差は見られず、これまでの累次のアンケート結果と同様、「主体性」と「実行力」が高いポイントとなっている。

今回の調査で注目すべきは、前回調査2と比較して文系・理系ともに「課題設定・解決能力」がより高い順位となり、さらに理系では「創造力」も高い順位となったことである。IoTやビッグデータ、人工知能などをはじめとする技術革新が急速に発展する中、指示待ちではなく、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出す能力が求められていることが示された。

一般社団法人日本経済団体連合会 2018「高等教育に関するアンケート結果」 

探究学習が上手くいくと、生徒はどう変わるのか

大きく3つの変化が考えられます

  1. 生徒の学力が上がる
  2. 生徒のやる気が高まる
  3. 生徒の進路に活きる

①生徒の学力が上がる
全国学力・学習状況調査の分析などに置いて、総合的な学習の時間で探究のプロセスを意識した学習活動に取り組んでいる児童生徒が多いのほど各教科の正答率が高い傾向にあるとされています。確かに、探究学習を通して高められる思考力・判断力・表現力は、汎用性が高いです。

②生徒のやる気が高まる
学習指導要領の中でも、総合的な学習の時間を通して、学力のみならず、学習の姿勢に大きく貢献するものとしてOECDを始め国際的に高く評価されているとの指摘があります。実際にも、生徒が自分なりの問いを見つけたり、それを解けたりすることで意欲や自己肯定感も高まっていきます。

③生徒の進路に活きる
探究を通して、自分なりの問いを持つことは、自分なりの社会との関わり方(将来や進路)を考えることにも繋がります。探究学習を通して、生徒の進路意識の向上に繋がったり、探究学習で行ったことを活かしてAO・推薦入試に活用する事例なども生まれています。

探究学習の方法/進め方

探究学習を進めるには、
  教員側が、生徒に探究学習を促す「ファシリテーション」を行うことが重要です。

探究学習では、生徒が自ら課題を設定して、解決をしていきます。これまでとは違い「知識や正解」を教えるだけでは達成できません。必要なのは、知識をもとに、それらを生徒が活用して、使いこなせるように促すこと、働きかけることが必要です。

そのために必要なことは次の2つです

  1. 教員側が、探究学習の4つのステップを理解すること
  2. 生徒が4つのステップを活用できるように、教員側が仕掛けを施すこと

それでは、まず探究学習の4つのステップをみていきます。その探究学習をどのように進めて行けば良いのでしょうか。文部科学省の例にも示すように「課題の設定」、「情報の収集」、「整理・分析」、「まとめ・表現」の4段階があります。

探究学習の4つのステップ

①課題の設定

課題の設定は、探究学習で扱う課題を決定します。
ここで大切なのは、次の2点です

 生徒が自分で課題設定すること。
探究学習で大切なのは、自分自身で課題を設定することです。そのために、様々な体験活動を行ったり、調べ学習の実施や、フィールドワークを組みます。教員側が生徒に様々な働きかけを行って、自分なりの問いを設定することを目指します。

② 「表面的な問い」を「深い問い」へすることです
生徒が問いを立てても、それが表面的で浅いものでは、学びが深まりません。そこで「浅い問い」を「深い問い」にできるように働きかけます。立場によって意見が異なることを理解したり、一つの課題の背景にある別の課題などの構造を理解したり、必要な知識をより調べることを促すことが重要です。

②情報の収集

課題を設定は探究学習のスタートです。そのため次の段階では情報の収集を行います。
情報の収集で大切なのは以下の3点です。

1つ目は、「課題の解決に、なにが役に立つのかを見通すこと」です。
やみくもに情報を集めるのでは、情報収集がうまくいきませんし、生徒の思考力も高まりません。そこで調べる前に、どのような情報を集めるとよいのかを見通を考えることが大切です。自分なりに考え、情報収集を行うことが、生徒の思考力を鍛えることに繋がります。

2つ目は、「情報手段を意図的・計画的に用いること」です
情報収集の手段は、様々にあります。インターネットで調べたり、図書館で調べることはもちろん、インタビューやアンケートなど様々です。それらの様々な手段を理解した上で、目的に応じて手段を使うことが期待されています。

3つ目は、「他者とのコミュニケーション」です。
情報収集を行う上で、他者とコミュニケーションが必要な場合があります。地域の方へのインタビューや、友人と議論を交わす場合などです。また、グループで探究学習を行う場合には必要ですし、もし個人で研究する場合にも、自分自身の研究が偏りがちになる可能性があるので、そのためにも中間発表などを通して、他者とコミュニケーションしながら行うことが大切です。

③整理・分析

情報を集めるだけでは、課題解決に繋がりません。そこで、集めた情報を整理・分析します
整理・分析で大切なのは以下の2点です。

 整理の方法を理解すること
情報の整理の方法には、様々な方法があります。例えば、原因と結果を整理したり、数値をグラフにまとめてたりなどです。それらの方法を理解していれば、理解しているほど、適切に整理できたり分析をすることができます。

② 情報が足りているかを考えること
情報の整理や分析では、集めた情報だけを整理すれば終わりではありません。集めた情報だけで、課題の解決に繋がっているのかを考えることもまた重要です。そうすると、情報が足りていないことや、もっと集めるべき情報に気がづくこともあります。そのような意識が大切です。

④まとめ・表現

探究学習の一年の流れを、最後にまとめて発表します。
整理・分析で大切なのは以下の2点です。

 最後まで仕上げること。
探究学習は、半年や1年間の期間が長い活動になります。その総仕上げとなるのが最終発表会などでの発表です。そのため生徒にとっては、そこの成否が半年間の成果を実感することになります。そのため、準備時間にも余裕を持ちながら、最後まで仕上げることが大切です。

② 質問や感想などでフィードバックを行うこと
発表会を通して、他の人から質問や感想を貰うことで、自分の考えがはっきりしたり、自分にない視点や自分の考えの偏りに気が付くこともあります。それらの機会があれば、発表会を通して、次の探究に繋げていく意欲へと繋がります。

探究学習の事例

 それでは実際の学校ではどのような事例があるのでしょうか。ここでは弊団体で支援させてもらった学校の例をご紹介します。詳細な記事は、株式会社ベネッセコーポレーションのベネッセ教育研究所が刊行する『VIEW21』に掲載がございますので、ご覧ください。 

https://berd.benesse.jp/magazine/kou/booklet/?id=5529

探究学習の教員の役割

 それでは、ここまで探究学習の意義や方法についてみてきました。それでは、ここから先は探究学習において学校教員がどのような役割を果たしたら良いのかについてまとめてみます。

生徒の段階に応じて異なる役割

生徒がどんな段階にいるかによって、求められている教員の役割が変わります。
大きく以下の3点です。

生徒がテーマを見つけるまでは、コーチング中心

②生徒が探究を理解するには、ティーチングを実施

③生徒が探究の計画書を作成する際には、メンタリング中心

コーチング

探究学習のテーマを選定する段階では、生徒が自分なりに考えたいテーマを、生徒自身が決定することが大切です。

生徒の中には、「まだやりたいことがわからない」「好きなことと言われても特にない」と回答する生徒も少なくはないと思います。その生徒に対して、生徒の中には少なくともなにかのテーマはあるだろうと考えて、教員側がその考えを引き出す関わり方が大切です。コーチングでは、答えは、生徒の側にあり、その答えを教員側が引き出すような関わり方が大切になります。

ティーチング

探究学習を進めるうえでは、課題設定の方法論やまとめ分析などの方法論についての知識なども必要です。

これらの知識がないと、生徒は自由にやれと言われても、どのように考え、進めてよいかわからずに探究が止まってしまう可能性が高いです。そこで、基本的な探究学習の基礎理解については、生徒の中に理解されていることが必要です。そのためには、通常の授業と同じように、生徒自身に探究の方法論を伝えるティーチングの考え方が必要になります。その場合には、答えは教員の側にあり、その内容を生徒が理解して、生徒自身の中で自分の探究に活かすための考えを考えてもらいます。

メンタリング

探究学習を進めていくうえで、の探究計画書を作成する段階では、これまで学んできたことや課題設定などについての情報を総合して統合することを行います。

ここの段階では、収束することを行うため難易度が高く、生徒自身も答えが見えてないこともしばしばです。その一方で、教員側が生徒との面談で指導しすぎると、それは「教員の探究学習」となってしまい、生徒の探究の機会を奪ってしまうことになりかねません。生徒を主体にしながら、生徒と対話を重ねることで、お互いの対話や議論の中に、より良い答えを見出そうとするのがメンタリングの関わり方です。

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